ミラーレス一眼カメラを LAN に接続 ~ Raspberry Pi で作った NAPT ルーター経由

イメージ
先日購入したミラーレス一眼カメラである OLYMPUS OM-D E-M10 III の Wi-Fi 機能を使って、Raspberry Pi 3B+ で作った NAPT ルーター経由で LAN に接続したよ、って話です。思い付きでやってみた感じで、設定も比較的単純な内容なのですが、他に記事になっているようなものを見かけなかったことと、やってみて、思ったように出来たこと、出来なかったことがありますので、まとめてみたいと思います。 プロジェクトの概要 ミラーレス一眼カメラでも、最近の上位機種は、LAN ポートを持っていたりして、直接ネットワークに接続できるものもあるようです。ですが、私の持っているものも含めて、現状の多くのカメラの場合、Wi-Fi 機能があると言っても、大抵は次のような使い方を想定したものであるようです。 カメラ側が Wi-Fi アクセスポイントとして機能するため、そこに接続するスマートフォンなどは、既存のインターネットなどの接続を切断した上で、新たに接続し直す必要があります。カメラがネットワークに組み込まれるわけではなく、Wi-Fi という形を取りながらも、ピア・トゥ・ピアでの接続となります。 屋外で使う前提でいくとこの形がいいのはわからなくもないのですが、既に LAN が導入され、Wi-Fi が飛び交っているような屋内で使おうとすると、手間ばかりかかります。他の PC などでも使おうとした場合、それぞれに接続し直さなきゃいけないし、デスクトップ PC などの場合は、そもそも Wi-Fi インタフェースを持っていない場合も多いし。ノート PC などで、Wi-Fi を使っていたとしても、既存の LAN やインターネットの接続を切ってつなぎ直さなきゃなきゃならないというのは、NAS などへのアクセスもできなくなることを意味するので、たとえば、カメラから取り込んだデータを NAS に保存したい場合などだと、作業に制限が出てしまいます。 というわけで、次の図みたいにできたら、便利なんじゃないかなー、という思い付きです。調査してみたところ、カメラとスマートフォンの間の通信プロトコルは、HTTP だということも判明したので、もしかしたら WebDAV が使えるのではないか、と期待してテストはしてみたのですが、そ

Windows 10 の「スリープ」「休止状態」「シャットダウン」とそこからの復帰 - 所要時間と待機中の消費電力を比較してみる



最近、また、新しいパソコンを組み立てたのですが、どのような運用方法が効率的で経済的なのか。表題の通りなのですが、実際に計測してみて、考えてみようというプロジェクトです。また、自身が必要としている機能を実現するためのパソコンとは、どのような構成のものなのか。今後の拡張も踏まえ、流行やロマンにとらわれない、本当に自身が必要としている機器構成を考えていこうと思います。


どのようにして測定するのか

 時間の方は、動画を撮影すれば、計測も比較も簡単です(でも、編集が大変でした・笑)。消費電力の方ですが …


こんな物を使いました。0.1 Ω のセメント抵抗器です。部屋を片付けていたら、たまたま出てきたところが、このプロジェクトを思いついた経緯でもあるのですが、こいつを AC 電源ラインの途中に入れて、両端に発生する電圧を測り、そこから、電流値を求め、さらに計算で消費電力を求めます。
最後に「J」と表示されているのは、誤差 5% 以下のことなんですが、測定器レベルとは言えなくても、十分に参考になる値は得られると判断しました。


配線はこんな感じ。このテスターには、交流の電圧モードがあります。200mV のレンジで測定すれば、電流値で 0.001A ~ 1.999A、消費電力に換算すると、0.1W ~ 199.9W が測れることになります。もちろん、これより消費電力が大きくなる場合は、テスターのレンジを切り替えればいいわけですが、電源電圧が 100V のときに 200mV のレンジを使うと、読んだ数値がそのまま電力値の W と同じになるので、便利です。
電源ラインの途中に抵抗器を入れることによる影響ですが、仮に、10A(1000W にあたる)流れたとしても、降下する電圧は 1V なんで、商用電力の電圧精度として、問題になることはないでしょう。

電流(A) = 抵抗器両端の電圧(mV) ÷ 0.1(Ω) ÷ 1000
消費電力(W) = 電流(A) × 100(V)

にて計算します。
あと、交流なので、正確に言えば、力率の問題があるのですが、幸い、測定対象のマシンは両者共に Active PFC を搭載しているので、大きな差にはならないだろうと判断しました。なお、テスター自体の表示は、仕様上、実効電圧での表示となっています。


測定対象マシンの紹介


1 台目・Pentium J4205

2 年ほど前(2017 年)に組み立てたマシンです。省電力・ファンレスでの静音を狙ったものです。
こんな感じ。


Pentium J4205 というのは、いわゆる Atom 系の SoC で、マザーボードに直付けされています。当時、これを使おうとすると、実質的に、このマザーボードしかありませんでした。
メモリーは、16GB、当時から、DDR4 の方が主流だったのですが、このマザーボードは、DDR3 のみの対応で、しかも、ノートパソコンなどで使われることが多い SO-DIMM です。


ストレージは、Western Digital 製の 3.5 インチ 3TB のハードディスクを 2 台。組み立てた当時は、1 台だけだったのですが、最近、バックアップ目的で 1 台追加しました。こちらも、省電力を意識して、あえて Blue です。更なる省電力のために、2.5 インチという選択も検討はしたのですが、容量単価を考えたら、結局、3.5 インチという選択になりました。
SSD は、搭載していません。従って、起動はハードディスクからです。作成当時は、今より SSD が高価だったというのもあるのですが、そもそも、省電力で静音を狙ったのは、24 時間点けっ放しを想定したからで、シャットダウン・起動という操作自体をあまりしないだろうから、そこをあえて高速化しても恩恵は少ないと判断したからでした。今回、測定を行ったのは、この判断・考え方が正しいかどうかを、検証する意味合いもあります。
その他に、光学ドライブを搭載しています。



内部です。SATA のケーブルが妙に余っています(笑)。マザーボードは、Micro-ATX なのですが、小さめながら、ミドルタワーのケースに入れています。ケースには、元々はファンが付いていましたが、全て、取っ払ってしまっています。
電源ですが、玄人志向の KRPW-12W で、外部の 19V の AC アダプターから供給し、ケース内には、DC-DC コンバーターボードを設置するタイプのものです。容量は 120W です。特に AC アダプター仕様にしたかったわけではないのですが、完全ファンレスの電源となると選択肢が限られたため、これを採用しました。

そして、注意!! 次の動画は、長いです。単に、消費電力を計りながら、CINEBENCH をやっているだけですが、マシン性能が低いので、時間がかかってます。実験記録の意味合いで、あえて、編集したり、早送りしていないので、暇がある方だけ、ご覧ください(笑)。


画面がぼやけているため、スコアが読みづらくて恐縮なんですが、何回かやってみると、大体、190cb 前後です。消費電力の方は、最大でも 30W に届かないくらいです。さすが、Atom 系の CPU です。なんか、Atom 系の CPU って、将来が危ういような話もよく聞くのですが、用途によっては、非常に効率的だと思っています。ぜひ、今後も存続させて欲しい気持ちがあります。

2 台目・Core i9 9900K

今はときめく(笑) Core i9 です。今年(2019 年)になって早々に組み立てました。まだ、作りたてです。J4205 とは全く違って、電力喰いとの評判です。これの運用方法を最適化するというのが、今回測定を行おうとした、もう 1 つの目的です。
使用目的としては、DTM であり、ゲーム等の使用は想定していないので、グラフィックボードは搭載していません。CPU パワーのあるマシンが必要になったのは確かなのですが、安定稼働とデータの保全を優先した構成と設定を目指しました。


メモリーは、とりあえず、16GB を載せてみた感じです。本格的に DTM をやりだした場合、どのくらい必要になるかは、まだ、実感がないところがあります。メモリースロットは、余裕があるし、後からの追加も難しいことではないので、最初は、こんなものかと。


ストレージですが、いろいろ考えた挙句、こちらも、とりあえずは SSD 非搭載です。こちらも、ハードディスクを 2 台積んでいますが、SATA のモードとして(AHCI ではなく)Intel RST Premium を選択し、RAID 1(ミラーリング)になるようにしています。なので、Windows から見ると、ハードディスクは 1 つだけのように見えます。このドライブから起動です。SSD を搭載しなかったのは、せっかくハードディスクを RAID 1 にしても、SSD が単独のままだと、万が一障害が発生したときに起動できなくなってしまうと考えてです。SSD まで 2 つ搭載して RAID 1 にするのは、現状だと費用が高くなりますから。あと、最近 M.2 接続の SSD が普及してきているというのもあって、この時期に、起動ドライブとして SATA 接続の SSD を買うのが良いのかどうか、悩ましいと感じたのもあります。ハードディスクからの起動でやってみて、不自由なければ、それでいいわけですし。
DTM での SSD の用途としては、現状思っているのは、起動ドライブよりも、アプリ(プラグインを含む)やソフト音源の波形データをインストールする方が効果的なんじゃないかという思惑もあり。必要になったら、今後、付けようとは思っています。
こちらも、光学ドライブを搭載しています。


結構、いろいろなサイトで書かれているのですが、このマザーボードを含め、現状(2019 年現在)ある Z390 マザーボード、デフォルトの状態で使って CPU に高い負荷をかけると、CPU の定格を超えるものが多いようです。私も、当初、デフォルトのままテストもしてみましたが、負荷のかけ方によっては、コア温度が 100 ℃近くになったり、CPU 消費電力が 270W を超えたりという現象が見られました。安定稼働を目指すシステムとしては考え物であったため、CPU の定格どおりの動作になるように、手動で設定しました。デチューンです。


内部です。こちらも、なんか、SATA のケーブルが長いんですが …(笑)。DTM で使うということで、内部に吸音材が張り付けてあるケースにしました。さすがに、ファンレスは無理だと判断しましたが、CPU 定格どおりの使い方なら、空冷でも問題はないだろうと判断して、空冷で構成しています。グラフィックボードを含めた拡張ボードが何一つ刺さっていないので、すっきりはしています。
電源ですが、Seasonic Focus Plus シリーズ SSR-750FX で、容量 750W です。80 Plus Gold 認証になっています。本来、400W か、せいぜい 500W 程度の電源で十分だろうと思っていたのですが、マザーボードの方が、CPU 電源として 8 + 4 の 12 ピンを必要とする仕様になっていて、これに対応している電源ユニットが、容量の大きいものばかりだという問題で、この製品の選択になりました。容量や出力ケーブルの数の他に、低負荷時にファンが完全停止してくれるという条件も加味しています。


CINEBENCH です。UEFI のデフォルト設定で実行すると、余裕で 2000cb 超えなんですが、CPU の定格に収まるようにデチューンしている関係で、大体、1750cb 前後のスコアになっています。
消費電力の方は、テスターの表示サイクルの問題もありますが、表示上の最大だと 158.4W になるでしょうか。CPU の TDP が 95W ですから、その他の部分での消費や、電源ユニットでのロスなどを考えると、だいたい、想定通りの数値と言えると思います。
Core i9 9900K については、電力喰いの爆熱という評価をあちこちで見かけます。この CPU を採用するべきかどうか、悩んだ部分もあったのですが、それもこれも、使い方の問題であって、きちんと定格に収まるような設定で使えば、それほど電力を喰うわけではないだろうし、空冷ファンでも問題ないだろうという、ある意味、確信を持って、構成を決めた感じです。同じ 1750cb を求めるなら、前世代の CPU に水冷システム付けてギリギリの運転を目指すより、こちらのシステムの方が安上がりだし、メンテナンスは簡単になるし、消費電力だって少なくなるし、結果、安定稼働できるだろうと考えています。まぁ、こちらは、まだ、組み立てて間もないマシンです。今後も、様子を見る必要はあると思います。


「待機・停止までの時間」および「待機・停止中の消費電力」の比較

それぞれのマシンごとに、以下の 4 つの状態に遷移するまでの時間と、その状態での消費電力の測定を行いました。

  • スリープ
  • 休止状態
  • シャットダウン(高速スタートアップ付き)
  • シャットダウン(高速スタートアップなし)

時間の計測ですが、開始は全てマウスのクリックに画面が反応した時点としました。どの時点をもって状態の遷移が完了したとみなすかの方が意外と判断が難しかったのですが、4  つの状態で共通に発生する事象であることと、人間の操作上での感覚として遷移が完了したと感じやすいという点を配慮して、VGA(接続は HDMI)が OFF になった時点までとしました。HDD のアクセスの有無などでみると、若干違うタイミングになりますが、実際問題、この時間差が気になるのは、シャットダウンした後に、節電タップのスイッチを切ったりプラグをコンセントから抜きたい場合に限られると思われるので、4 つの状態への遷移の使い分けを判断をする上では、このタイミングで問題ないのではないかと思っています。むしろ、待機・停止中に、ディスプレイの電源を OFF にするべきかどうかという議論になった場合、VGA が OFF になるタイミングの方が重要になるのではないかと考えました。ディスプレーの電源を OFF にすべきかどうかの検証は、別途、やろうかと考えています。
待機・停止中の消費電力の方は、状態が遷移した後、十分な時間を置いて、数値が安定した時の値としました。次の動画でも、状態遷移後、1 分以上観察をしていますが、ノーカット早送りなしで載せてますので、お忙しい方は、適当に飛ばしてくださいね(笑)。
なお、両者共に、OS は Windows 10 Home、USB キーボードと USB マウス、HDMI にてフル HD 解像度のディスプレイを接続し、他の外付けデバイスは外してあります。マシンの紹介で書いたように、内臓ストレージの構成が違ったり、使用目的が異なるため、インストールされているデバイスドライバーやアプリケーションソフトには、若干の差異があります。あと、ハイブリッドシャットダウンは有効(デフォルト)のままです。電源メニューの「休止状態」については、両者とも、デフォルト状態だと、表示されていなかったため、設定を変更して、表示されるようにしました。


結果だけ、表にまとめます。

スリープ休止状態シャットダウン
(高速スタートアップ付き)
シャットダウン
(高速スタートアップなし)
Pentium
J4205
5.6s
5.0w
5.6s
4.4W
6.6s
4.4W
17.4s
4.4W
Core i9
9900K
5.4s
6.0W
5.6S
5.3W
7.3s
5.3W
17.8s
5.3W

原因の分析や、それに対する対応策は、後程あらためて考えるとして、とりあえず、見えた現象と、その感想だけ書きます。
  • いわゆる待機電力は、Pentium J4205 で 4.4W 以上、Core i9 9900K で、5.3W 以上。想像していたよりかなり大きいです。ただし、両者の差は、思っていたより小さかったです。
  • 休止状態とシャットダウンに、明らかな待機電力の差は、認められないと言えると思います。デジタル表示の数値のぶれ方に差があるようにも見えますが、ここについては、後程、考察しようと思います。
  • スリープとその他休止状態・シャットダウンの時の待機電力の差は、2 枚刺しの計 16GB のメモリ搭載で、0.6W ~ 0.7W 程度。まぁ、そんなものかな、とは思いますが、シャットダウン中の待機電力の多さからみると、その割合は少ないと感じました。
  • 所要時間で、明らかに大きな差があるのは、高速スタートアップなしのシャットダウンです。高速スタートアップの設定は、スタートアップが速くなるだけではなく、シャットダウンも高速になっていることがわかります。
  • 所要時間、その他については、明らかに差はあるし、繰り返しテストしても、結果に再現性を認めるのですが、正直、気になるような差ではないと感じました。感覚的には、画面で操作終了した時点で、もう、手放しですから(笑)。


「起動・復帰までの時間」の比較

上記と同じ 4 つの状態から、今度は、再び使えるようになるまでの時間の計測です。こちらも、どの時点からどの時点までの時間なのかを、事前にはっきり決めておこうと思います。
まず、開始時点ですが、スリープと休止状態からの復帰については、キーボードの押下で開始される設定になっている(後述)ので、そこを基準にしました。一方で、シャットダウンからの起動は、電源ボタンの押下が必要な設定になっています(こちらも後述)。最初、撮影した動画から押した瞬間を割り出そうとしてはみたのですが、どうも、スイッチ自体の機械的な構造が同じでない上に、微妙な押し方で差がでてしまう感じがありました。また、チャタリング防止回路が入っていると思われるのですが、そこの帯電具合が場合によって変化している可能性もあります。特に、Core i9 9900K に使った電源ユニットである SSR-750FX の場合、ユニット内部で機械式のリレーを使っているみたいで、そこでも反応時間にムラが発生しているように思います。ですので、こちらは、電源ランプが点灯した時点に統一しました。
終了時点ですが、こちらは、ロック画面の表示が始まった時点としました。本来なら、ロック画面の表示が完了して使えるようになった時点としたい感じもあったのですが、よく観察すると、それぞれの状態ごとにロック画面の表示プロセスに微妙な差があるようで、統一した基準で表示完了を明確に判断するのが困難でした。
いずれにしても、一瞬の差ではあるので、体感上の順位が変わってしまうようなものではないと思います。


結果です。

スリープ休止状態シャットダウン
(高速スタートアップ付き)
シャットダウン
(高速スタートアップなし)
Pentium
J4205
10.1s19.9s20.9s48.1s
Core i9
9900K
10.6s20.8S20.0s42.0s

こちらも、原因の分析や、それに対する対応策は、後程あらためて考えるとして、とりあえず、見えた現象と、その感想です。
  • スリープからの復帰は、他者に比べて、圧倒的に速い。また、マシン性能による大きな差は認められない。というか、微妙に逆転している現象については、後程、考察しようと思います。
  • 休止状態からの復帰と、高速スタートアップ付きのシャットダウンからの起動は、トータルの時間でみると、どれも大差ない。ただ、よく観察すると、ハードウェアや、BIOS(UEFI)の部分は、微妙に Pentium J4205 の方が速い一方、Windows の処理が始まってからは、Core i9 9900K の方が速くなっているのがわかります。
  • 高速スタートアップなしのシャットダウンからの起動は、他者に比べてかなり多くの時間を費やす上に、マシン性能の影響も大きい。


分析・考察


シャットダウン時の待機電力が想像以上に大きい

何といっても、ここが想像していたより大きかったことに驚きです。ここについては、以前、マイクロソフト社が測定したデータなどを見ていたので、もっとずっと少ないものだと思っていました。これ、もしや、自身の測定方法に問題があるのかと疑ってみたりもしたのですが、他の家電類の待機電力を多数計測してみたり、ニクロム線で計測した上に、テスターで測った抵抗値と理論的に一致しているか検証したり、はたまた、さまざまな所で使われている AC アダプター(スイッチング電源)のアイドル時の消費電力を測定してみたりしたのですが、矛盾のある数値は出ませんでした。
Pentium J4205 の方は、AC アダプター仕様ですので、AC アダプターを外して、負荷をかけていない状態での測定も行ってみました。


2.6W ですね。この AC アダプター自体、出力をオープンで使うことを想定してないかも知れませんし、スイッチング電源は、負荷のかかっている状態とかかっていない状態で動作が変化するので、これがそのまま使用中のロスになっているというわけではないと思うのですが、2.6W という大きさになっているのは、それなりに理由があるような気はしました。念のため、家のあらゆる所で使われている AC アダプターやら USB 充電器やらを計測してみたのですが、ほとんどが測定限界(0.1W)以下で、メーターの変化なし。一部は、0.1W 程度といった感じです。
ただ、他の一部に 1.0W を超えるようなものも確かにあって、なんか理由があるのかと調べてみたんですが、どうも、Active PFC の影響が大きいんじゃないかと疑っています。AC アダプターはもちろんなんですが、一体型 ATX PC 電源においても、5VSB(スタンバイ電源)を供給しなければいけない関係で、Active PFC は稼働したままになっているっぽい。かりに、750W を供給するための Active PFC が稼働したままになっているとすると、そこには、それなりに大きな容量のスイッチング素子が使われているわけで、それを駆動するための電力も含めて、ロスが大きくなるのは当然かなぁ、という気はします。500W 消費時に 5W ロスしても 1% ですから、80Plus Gold の認証に問題が出るようなことはないのかもしれませんが、それが待機時にも同じように消費されているとしたら、どうなのかなー、って感じです。
PFC に関しては、確かに、家の中で 750Wを超える(出力が 750W ですから、消費電力はそれ以上)ような機器が、低い力率で稼働されたら、電力ノイズが気になるかもしれませんし、そもそも、0.5 を下回るような極端に(だけど、普通にこの位の機器は存在する)力率の低い状態だと、配線やコンセントの対応の方に問題がでてしまう可能性もありますから(ただ、ここについては、また、別に考える機会を作りたいです)、必要だとは思うのですが、フル稼働時と同じシステムを、休止時にも稼働させたままにしておくというのは、考え直して欲しい感じもします。5VSB だけ PFC を通さないとか、別途、小電力用の Active PFC 回路を付けるとか、なんか、方法はあるのではないでしょうかねぇ。
現行の商品から ATX 電源を探してみると、一部に待機電力の小ささをうたっているものが見当たります。ただ、多くは、待機電力には触れてないですね。省エネに関する表記では、80Plus 認証のクラスに偏っているように思います。
いずれにしても、シャットダウンした状態でも、想像以上の電力を消費しているということなので、旅行など、長期に渡って使わないような状況の時は、コンセントからプラグを抜くか、スイッチ付きテーブルタップを使うか、検討した方がいいような気がしてきました。一部、メーカーやショップでは、この元電源の遮断は、マザーボード上の電池の消耗を早めるということで、推奨していないというのがあるのですが、自作パソコンの場合は、比較的簡単な作業で電池交換できちゃうし、電池自体もどこでも売っている CR2032 なはずだし、UEFI には、ちゃんとメディアへのバックアップ機能があるので、万が一の時はそこから書き戻せばいいわけだし、そう心配することはないですよね。ただ、どういった場合に元電源まで遮断する方が良いのかは、検討する必要があると思います。
待機電力の少ない電源ユニットに交換というのも、検討の対象にはなりますが、ただ、費用だけ考えたら、元を取るのは難しいでしょうね。まぁ、気分的な問題はあるでしょうけど(笑)。次回、パソコンを組み立てるような機会があったら、覚えておいて考慮に入れたい、ってところでしょうか … Core i9 9900K で組み立てたばかりなので、当分はないです(笑)。

「スリープ」と「休止状態」

このテストでの構成であるメモリ 2 枚刺し 16GB だと、両者の待機中の消費電力の差は、0.6W ~ 0.7W なわけで、あえて休止状態にするデメリットを考えると、デスクトップパソコンなどの場合、デフォルトの状態で電源メニューに表示されないのも、なんとなく納得できます。というか、「休止状態にすればシャットダウン時と同等の消費電力」って言い方は、確かに正しいようなのですが、そもそも、スリープ時とシャットダウン時の消費電力に、思ったほどの差がない、って感じでしょうか。本当に省エネを考えるなら、やはり、スイッチ付きテーブルタップを使うか、コンセントからプラグを抜くかしないと、あまり意味がないと考えられます。
一方で、スリープにしておくと便利なのは、復帰が速いのもありますが、やはり、OS のアップデートなどのタイマーで起動される処理を、自動で完了できるように設定できることでしょうか。なんだかんだ言っても、作業をしようと思ってパソコンの前に座ったのに、ログインした途端にアップデートを提案されたりすると、イラっと来ます。私自身は、「使っていない間に終わらせておけよ!」って思ってしまう方です。
動画では計測していないですが、スリープにも入っていない CPU のアイドル状態と、スリープに入った状態の消費電力の差は、逆に注目すべきかと思いました。スリープにするだけで、シャットダウン時にかなり近い消費電力まで抑えられるのだと。ここは、積極的にスリープに入れるのが良さそうですね。

シャットダウンは「高速スタートアップ」の「あり」・「なし」で動作が全く異なる

状態が遷移したあとの消費電力に差は見られないです。「あり」にすれば、起動が速くなるのは、あたりまえに感じますが、実は、シャットダウンにかかる時間も、かなり速くなっています。
これは、高速スタートアップのないシャットダウンの場合、カーネルやデバイスドライバーを、シャットダウン時にきちんと終了させて、OS 起動時に改めて最初から起動させているためだと思われます。なんか、Windows って、律儀ですね(笑)。マイクロカーネルだからなのか、はたまた、ずっと昔の Windows 3.0 / 3.1 の頃は、DOS から起動して、終了後は DOS に戻らなきゃいけない仕様だったのを引き継いでいるからなのか …。まぁ、それを前提に、いままで多くのデバイスドライバーが作られてきたんだと思うので、変更されると不具合が出るものもあるのだとは思います。
逆に、高速スタートアップ付きのシャットダウンの場合、実際にのところ、ユーザーアプリケーションプログラムを全て終了(サインアウトした状態)させた後に、休止状態に入るのと近いように感じ受けます。

状態が遷移した後のハードウェアの状態

なんか、いろいろなサイトとかを拝見していて誤解が多いと思ったのは、ここの部分でしょうか。まずは、Windows からの操作後に、ハードウェアがどのような状態になるか、です。これについては、マイクロソフトのサイト(英語)に記載があって、抜粋すると、下記のようになっているとのことです。

※ S0 での「Sleep (Modern Standby)」という状態については、一般のパソコンでは関係なさそうなので、ここでは考えないことにしておきます。J4205 は、まさしく SoC なんですが、それでもサポートされていないようです。というか、サイトの記述のように、これがサポートされている場合は、S1 ~ S3 の方が使われないみたいです。

Windows の動作
スリープ休止状態シャットダウン
(高速スタートアップ付き)
シャットダウン
(高速スタートアップなし)
S1 ~ S3S4S4S5

では、そのハードウェアの状態についてです。S0 ~ S5 というのは、ACPI で定義されているスリーピングモード(マイクロソフトのサイトでは、System Power Status と書かれている)と言われているものですが、ここで重要なのは、それぞれのモードにおいて、ハードウェアが実際にどんな動作をするかは、機種によって異なるし、BIOS(UEFI)の設定で変更できる場合もあるということです。Windows は、どのスリーピングモードをサポートしているかは関知していますが、それぞれのモードで実際にハードウェアがどんな動作をするかまでは関知していないといえます。
また、S5 というのは、シャットダウンした状態ということで、所々で「待機電力なし」みたいな記述もみかけるのですが、測定結果からもわかるように、実際には、電源ユニットがコンセントにつながれている限り、待機電力が発生しています。
その電源ユニットなんですが、ATX 電源の場合には、基本的に、仕様上は、全ての出力が使用可能になる ON の状態と、5VSB のみが使えて他の出力が使えなくなる OFF の状態しかありません。そこで、各スリーピングモードにおいて、電源ユニットは、それぞれ ON なのか OFF なのかという問題が出てくるわけですが、測定に使用した 2 つのマシンにおけるマザーボードの場合、S3 ~ S5、全て、電源ユニットは OFF でした。5VSB 以外は、全て止まっています(テスターを当てて調べました)。逆に言えば、スリープ中のメモリなどへの電源供給は、5VSB から行われているということになります。スリープ中の消費電力と、休止状態中やシャットダウン中の消費電力の差が小さいのは、こんなところにも要因があるのかと思います。
ただ、この電源ユニットの ON・OFF や、スリープ中のメモリへの電力供給源についても、それぞれのマザーボードの動作次第とも言えるわけで、機種や設定で変わる可能性があります。また、仕様上は ON と OFF しかないわけですが、マザーボードとは関係なく、電源ユニット自体が消費される電力や温度によって動作を変えているものはあります。
ちなみに、今回、測定を行ったマシーンのマザーボードは、両者共に ASRock のものなので、動作が似ています。どちらも UEFI の設定で動作を変更できるのですが、デフォルトの状態だと次のような動作になっていて、この状態のまま測定を行っています。

測定につかった ASRock マザーボード 2 種のデフォルト状態での動作
Windows からの操作電源ユニット電源 LEDキーボード・マウスからの起動・復帰起動・復帰時のハードウェアチェック
スリープoff点滅なし
休止状態off消灯あり
高速スタートアップ付き
シャットダウン
off消灯×あり
高速スタートアップなし
シャットダウン
off消灯×あり

正確に言えば、この LED 表示状態や、キーボードやマウスの使用の可否、さらには、USB ポートへの給電の有無などで、待機中の消費電力が変化するはずです。測定の際に、休止状態とシャットダウンで、微妙にデジタル表示のブレ方が違うように見えるのは、このあたりが原因だと思われ、マザーボードの種類によるのはもちろんのこと、UEFI の設定によっても変わる部分だと思います。特に、USB ポートの通電の有無による消費電力の変化は、そこにつながれているデバイスによっても変わるわけで、実際の使用環境において、それらを OFF にできるのか、あるいは OFF にすべきなのか、という点からも考える必要があると思われます。

キーボード・マウスからの起動では不可解な現象が …

計測に使った ASRock のマザーボード 2 種の場合、UEFI の設定により、キーボードやマウスの操作で、S5 から復帰(起動)するようにすることも可能です。


この「USB Kanboad/Remote Power On」という部分と「USB Mouse Power On」という部分を、それぞれ Enabled にすればいいわけですが、なぜかこうなってしまいます。
  • コンセントにプラグを刺した直後は、前回の Windows のシャットダウンの方法に関わらず有効になります。
  • 一度 UEFI を開いた状態から電源ボタンを押してオフにした状態でも、前回の Windows のシャットダウンの方法に関わらず有効になります。
  • Windows を高速スタートアップなしでシャットダウンした場合は、恒に有効になります。
  • Windows を高速スタートアップ付きでシャットダウンした直後は、機能しません。一度、コンセントからプラグからプラグを抜いたり、UEFI の画面に入ってから電源を落とすといった操作をすると、有効になります。
つまり、これは、あくまでも S5 の時の動作を設定するものであって、S4 の時の動作は、Windows が決めているということだと思います。高速スタートアップ付きのシャットダウン直後の状態は S4 だということで、UEFI での設定ではなく、Windows が動作を決めているみたいです。
一度コンセントから電源プラグを外して刺しなおすなどの操作により S5 になるので、UEFI の設定の方が有効になるということみたいです。

Windows 10 が認識しているのは S1 ~ S3 が使えるかどうか

ハードウェアや BIOS(UEFI)が S1 ~ S3 に対応しているかどうか、それが有効にしてあるかどうかで、スリープが使えるかどうかが変わるようです。


UEFI の設定はここになります。この機種では、S3 の有効・無効を切り替えできます。


S3 を無効にした状態だと、スリープは使えません。電源メニューにも、表示されなくなります。休止状態や、高速スタートアップ付きのシャットダウンは、普通に使えます。

「休止状態」や「高速スタートアップ」というのは終了の仕方の違い

S5 が使えないマシンというのは、基本的に無いでしょう。で、S4 なんですが、Windows の起動に際して、S4 から起動しても、S5 から起動しても、差異は認められないようです。試しに、休止状態をして S4 にしたあとに、コンセントからプラグを抜いてしまったり、あるいは、復帰時に UEFI から別の OS を立ち上げてしまったりと、実験してみましたが、次回起動時には、きちんと休止前の状態に戻りました。逆に言えば、Windows を終了させてしまった後に、これを変更することは、基本的にできないってことですね。必ず、前回の終了時に指定した方法で、立ち上がります。
ただ、推奨されたことじゃないでしょうから、これを常用するのは問題あるかもしれませんね。今後、何か起こる可能性があるかもしれないですから。

「スリープ」や「休止状態」と「シャットダウン」の違い

単純にロック画面に行くまでの時間で比較してしまうと、忘れてしまいやすいところですが、ここには、ユーザーアプリケーションプログラムを終了させるのかどうかという、大きな違いがあります。作業の継続性という面で差が出ますので、運用を考える上では重要な部分です。
試しに、動画再生中に、「スリープ → 復帰」「休止状態 → 復帰」「シャットダウン → 起動」とやってみました。


「スリープ」や「休止状態」に入っても、復帰すると、起動していたアプリケーションプログラムは元の状態に戻り、動画の続きから再開できます。しかしながら、「シャットダウン」した場合には、アプリケーションプログラムは終了してしまうので、続きを再開することはできません。
なんか、パソコン内をフレッシュな状態に保つ(ゴミを残さない)ために、高速スタートアップなしでシャットダウンした方が良い、という考え方もあるようなんですが、どうなんでしょうかねぇ。言っていることは正しいと思うのですが、個人的には、それはコンピュータが不安定だった頃の古い考え方なような気がするし、自身の作業のやり方としては、継続性の方が重要なように感じています。実際のところ、たとえば、スマートフォンを予防的な意味を持って定期的にシャットダウンしている方って、どれくらいいるんでしょうか? パソコンだからって、定期的な再起動が必要だというのは、前提にはならないと思っています。欠陥があるのを当たり前と捉えるような考え方では、決して使える道具にはならないですから。もちろん、具合が悪くなってきたというのなら、回復手段の 1 つとして、再起動を試みるのは、よくあることだとは思うのですが、私としては、頻繁にそんな状態に陥るアプリケーションソフトの方を避けてしまいます。

「スリープ」「休止状態」「高速スタートアップ付きシャットダウン」でマシン性能の差が所要時間に反映されないのは …

まず、この 2 つのマシン、CPU 性能の差が大きいのに比べて、メモリの速さや、ハードディスクの速さは、あまり差がないというのがあると思います。ただ、それだけじゃなくて、複雑なシステムになれば、それだけやることが増えるというのもあるのではないでしょうか。単純に考えて、レジスタの数やキャッシュの量が増えれば、それだけスリープ時に退避しなければならないデータの量が増えます。また、メモリを増やせば、休止状態や高速スタートアップ付きシャットダウンの際に読み書きしなければならないデータの量が増えます。いわゆる高性能なマシンの方が、実はやらなきゃいけない事柄がたくさんあることになると思います。


結局、この 2 台のマシンをどのように運用してゆくのがよいのか

Pentium J4205

こちらは、今までの 2 年間も、ほとんど電源を落とすことなく、点けっぱなしだったわけですが、とりあえず …
  • たとえシャットダウンしたとしても、省電力パソコンに似合わず、待機電力は大きいので、旅行などで長期に使わない時は、コンセントからプラグを抜く。場合によっては、スイッチ付きテーブルタップを用意するかも。
  • スリープであっても、節電効果はそれなりにある。離席のときには、こまめにスリープに入れる他、一定の時間、操作がないときに自動でスリープに入る設定も、引き続き継続し(元から設定はしてあった)、時間の設定も状況に合わせて見直す。
  • 休止状態は、確かにシャットダウンと同等の待機電力だけど、実は、スリープ中の消費電力と大差ない。シャットダウンより便利な部分はあるけど、どのようにスリープと使い分けるかは、悩ましい。


Core i9 9900K

こちらは、まだ、本格運用前で、実は、ディスプレイも新たに手配する予定なのですが、こちらも、とりあえず …

  • CPU 定格運用に合わせてデチューンしたためか、世間で「電力喰いで爆熱」と言われるほどには、消費電力は多くない。なので、電気代を気にして使用を躊躇するような必要までは感じないです。
  • 休止状態の意義を感じづらいのは、Pentium J4205 と一緒なのだけど、スリープにする有用性は、Pentium J4205 より大きい。DTM で使うとなると、自動でのスリープ入りを避けたくなるケースもあるような気もするのですが、その有用性を再確認して、手動でもいいから可能な時には小まめにスリープに入れるとか、自動でスリープに入る時間を見直すとかは、必要だと思いました。

ま、いずれにしても、こちらのマシンは、運用方法が煮詰まるのは、まだ、先です。現時点では、この先の判断のためのデータが取れた、ってレベルです。DTM の環境が整ったら、また、もう少し具体的に決めることになります。


最後に …

「具体的にどうするか、何も決めてないじゃないか」って言われてしまうかもしれませんが、必要なのは、根拠のない思い込みや、鵜呑みにした情報によるのではなく、正しいデータを元に、正しい判断を行い、無駄な行動をやめることじゃないかと思います。正しい根拠を手に入れれば、行動は自ずと変わってくるとも思います。
あと、起動ドライブを SSD にしたときの違いとか、本当は気になっています。ただ、計測しつつ実感したところでは、高速スタートアップなしでシャットダウンしない限り、そこまで起動時間に不満はないです。むしろ、SSD には、OS 起動以外の、アプリ起動やデータの読み込み時などでの効果を期待したいのですが、定量的にその効果を確認する方法を、まだ思いつかないです。とりあえず、今のところ、お金かけるなら、まだ、別のところに使いたいのもあるし(笑)。
記事に関するご意見、ご感想、間違いのご指摘などは、大歓迎です。お待ちしています。

コメント

このブログの人気の投稿

XCY X33J1900 というベアボーン PC … ルーターとして使用中

ハードディスクから Raspbian Buster を起動の予定が … Raspbian Stretch を入れ直す・詳細手順の紹介

2 台目の XCY X33J1900 を入手 … ハードウェアの準備と Debian Buster のインストール・シリアルコンソールの設定